薬剤師の給与事情
薬剤師の仕事の大変さは、企業規模と密接な関係にあります。薬剤師は業務独占の専門職ですから、自分ひとりしか薬剤師がいないような職場と大勢の薬剤師がいる職場とでは、個人の負担の重さがまるっきり変わってしまうためです。
では、そうした負担の差と給与事情は見合っているのでしょうか? 薬剤師の職場を「従業員1,000人以上」「100~999人」「100人未満」の3つに分けて初任給を比較していきましょう。
働く会社の規模と初任給との関係
<従業員1,000人以上の職場>
こちらのカテゴリに該当するのは大企業ばかりです。製薬会社でいえば武田薬品やアステラス製薬、第一三共といった大手20社ほど、ドラッグストアでいえばマツモトキヨシ、ツルハ、ウエルシアといった全国規模のチェーンのほぼすべてが当てはまります。気になる初任給は25~30万円前後といったところで、2~3万円程度男性のほうが好待遇となっています。
<従業員100~999人の職場>
こちらは製薬会社でいえば千寿製薬や佐藤製薬、あすか製薬といった中堅企業が該当します。ドラッグストアでいうと、地域ローカルのチェーン店が当てはまるでしょう。こちらの初任給も25~30万円前後となっており、1,000人規模の大企業とほとんど違いはありません。給与に男女差があまりないのも特徴です。
<従業員100人未満の職場>
一方こちらに該当するのは、個人経営の薬局や診療所などです。薬剤師の初任給が最も高いのは実はこちらで、いきなり30~40万円ほどの月給に期待ができます。負担の大きさに見合った待遇といえるでしょう。ただし古い体質が残っているケースも多く、男女で6~7万円も平均額が変わってきます。女性にとっては必ずしも良い職場とは言い切れません。
薬剤師の気になる初任給と将来性
長期的に比較しても一長一短
以上のように、初任給だけを見ると小規模な職場が最も好待遇ということになります。しかし、より長いスパンで比較すると事情は少々異なってきます。
1,000人以上の大企業の場合は、ボーナスの金額が最も高額です。月給こそ50万円程度で頭打ちですが、40代以上になれば150万円前後のボーナスを支給されることもめずらしくないので、生涯勤め上げた場合の収入ではほかに引けを取りません。また、金銭面以外での福利厚生も充実しています。
逆に100人未満の小規模な職場では、月給こそ60万円を超えることも多々ありますが、働き盛りになるにつれ時間外労働も長くなる傾向にあります。時給換算で考えるとさほど恵まれているとは言いがたいのが実情です。ただでさえ小規模な職場では薬剤師の負担が大きいですから、プライベートも大事にしたいという人にとっては厳しい環境かもしれません。
このように、長期的に見ればどの職場も一長一短だといえます。「多忙でもとにかくたくさん稼ぎたい」という人は小規模な職場へ、「安定を得つつプライベートも充実させたい」という人は大規模名職場を目指すとよいでしょう。
世間と比較する薬剤師の初任給
他業種と比べると高収入だが・・・
ここまで薬剤師の給与事情を見てきましたが、それでは他業種と比較するとどうなっているのでしょうか?
世間一般からみて高収入なのか低収入なのかといえば、これは紛れもなく高収入だといえます。薬剤師より明らかに高収入の職業は、会計士やマスコミ関係、大学教授などごく一部に限られています。
では、薬剤師の「高収入ってどれくらい?」、「薬剤師全体の平均年収は?」など、薬剤師の年収について知りたい方は『職場別に見る薬剤師の年収』をご覧ください。
一方で、医療関連に限定するとごく平均的な収入でもあります。医師や放射線技師よりは低く、看護師や歯科衛生士よりは好待遇、ほぼ同程度の収入となるのは歯科技工士です。ただし勤務時間は医師と匹敵するほど長いため、やはり余暇を大事にしたい人にとってはつらい環境かもしれません。
薬剤師は高収入なぶん忙しい職業です。薬剤師として働くつもりがあるならば、金銭面以外でのやりがいもぜひ持ちたいところです。