薬剤師の今後の展望を考える
今現在、薬剤師は安定雇用を得られる資格の1つとして人気を集めていますが、5年後、10年後に同じ状況を保っているかどうか不安に思う方もいらっしゃるでしょう。こちらでは“本当に薬剤師という仕事で一生が保証されるのか”を心配している皆さんのために、薬剤師資格の今後について考えてみたいと思います。
これからの薬剤師の需要はどうなる!?
現状、薬剤師は不足していますが、これは主に薬学部6年制移行の影響によるものです。2006年をもって4年制の薬学部に入学しても国家試験が受けられなくなり、6年制へと移行しました。しかし、2006年に6年制へと進学した新入生が国家試験を受けるのは6年後にあたる2012年のこと…。そのため、2005年に4年制薬学部に入った新入生の卒業年度である2009年を最後に、2012年の卒業生が出るまでの空白期間である2010、2011年は薬剤師の供給が鈍化していたのです。その結果、今は空白の2年間の影響が消えておらず、薬剤師は不足傾向になっています。
今後高年齢化に伴って薬剤師も幅広く活躍することも想定されております。また、コロナ禍で益々薬剤師の需要が高まり活躍が期待されています。併せて他の薬剤師にはない専門知識や高いスキルを身に着けることも重要となってくるでしょう。
薬剤師を必要とする場所はどう変化する!?
これまでは“薬剤師といえば薬局・薬店で働くもの”というイメージが一般的でしたが、今後は少し状況が変わってくるでしょう。近年、高齢化の進行により高齢者の在宅ケアの必要性が増しており“薬局で待つビジネススタイルから、在宅医療へ”という移行が始まりました。実際、在宅服薬指導を行う薬局も出てきており、この流れはどんどん加速していくことでしょう。
また、薬剤師をコメディカルスタッフとして医療チームに加える病院も増えてきました。NST(栄養サポートチーム)などで、すでに多くの薬剤師が医療チームの一員として働いています。
今後、薬剤師の働く場所が、在宅医療の場、高度専門医療の場へと広がっていくことは間違いありません。
これからの時代を担う薬剤師とは?
現在、医療の高度化、専門化がめまぐるしく進んでおり、病院薬剤師の役割は一気に多様化しています。そういった役割に対応できる薬剤師を育成するため、近年、専門薬剤師・認定薬剤師の資格が続々と整備されてきました。
一例を挙げると、感染制御認定薬剤師、がん薬物療法認定薬剤師、精神科薬物療法専門薬剤師…といった認定資格が、医療の専門化をカバーするための資格といえます。今後、特に病院薬剤師として働いていくつもりなら、こういった認定資格の取得も前向きに考えるべきでしょう。
いつまでも働ける薬剤師を目指すために
今後20年、30年と働いていける薬剤師を目指すのであれば、何を置いても得意分野、専門分野を持つ努力を怠るべきではありません。例えば、漢方が再注目されている現況を踏まえ、漢方薬・生薬認定薬剤師の資格を目指す…など、自分の強みを身に着けるべきでしょう。この資格があれば、漢方を専門的に扱う薬局、漢方外来を設置している医療機関への就職が有利になることも考えられます。
他には、次世代の薬剤師を育てるスペシャリストになるため、研修認定薬剤師、認定実務実習指導薬剤師を目指す…といった方針も良いでしょう。
薬事業界の状況が変わっても働ける人材であるためには“この分野ならいつでも仕事ができる”という専門分野を持つことが何より大切です。